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ブルース・リウさんピアノリサイタルの感想とショパンコンクールでの出会い

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ショパン国際ピアノ・コンクールの優勝者、ブルース・リウさんのリサイタルに行ってきました。

目次

ブルース・リウさんについて

公式情報より

ブルース・シャオユー・リウ(英語:Bruce Xiaoyu Liu 1997年5月8日~)
中国系カナダ人のピアニスト。
第18回ショパン国際ピアノ・コンクール優勝者

wikiより引用

2021年のショパコンで、日本でも有名な人となりましたが、実はそれ以前から既に数多くのコンクールで入賞していたようです。

当該ショパコンでも、色々な功績を残しています。

・史上初、ファツィオリピアノでの優勝
・1~3次審査で、審査員満場一致のYES(次も聴きたい)

参考:wiki 第18回ショパン国際ピアノコンクールより

むじか

18回ショパコンやブルースさんの人となりについては、素晴らしいブログが既にあるので、そちらもご参照ください。

むじか

ここから下は、筆者の個人的な感想・一方的な長文恋文となっております。
耐えられる方のみどうぞ…

筆者がブルースさんを知った瞬間

筆者がブルースさんの虜になったのは、まさに2021年のショパンコンクール。
優勝したから…ではなくて、衝撃の出会い(一方的な)でした。

注目の日本人ピアニストも多く出場されていたため、連日youtube配信を聞いていました。

反田恭平さん、小林愛実さん、牛田智大さん、かてぃんさん とかね。
他にも沢山の素晴らしい日本人ピアニストさんたちも出場してました。


とは言え、1.2次予選は人数が多すぎて、ずっと傾聴はできない(*_*;
日本人以外は、可能な範囲で流し聞きしてました。

流し聞きだと、自分的に印象の薄い演奏は通過してしまい、どなたの演奏かすら覚えてません。

ですが、ある時バラード2番が流れてきて…導入の音色を聞いた瞬間

衝撃を受けた顔
むじか

なんて温かみのある音色なんだ…

でも表情がどんどん変わって寂しそうになった…

しかも中間部とコーダめっちゃ技術高いやん!
うっっっま!!誰!??

と画面に釘付けとなりました。

バラード2番は、筆者も演奏会で弾いたことがあり、どう弾きたいかが明確にある曲でした。
その理想を、全て表現してくれたような演奏をしていたのが彼です。

ショパコンでのバラード2番 演奏

その瞬間から、ブルースさんの動向が気になって気になって…という状態になりました。

筆者から見たブルースさんの演奏

3次予選のブルースさんの演奏はリアルタイム視聴することにしました。
確かけっこうな夜中だったんですよね。

3次予選の演奏を聴いて、先日感じた彼の魅力を再確認しました。

・基本の音色がとても温かく優しい
・音色が本当に多彩
・表情が豊かに変わる
・背景音の均整が非常にとれている
・めっちゃ技術力高いのにひけらかさない
・強調したいフレーズ、音がとても明確


私が最も魅力的と思うのが彼の音色の変化
基本は優しく温かい音色。
笑顔で弾いている想像ができるような。
だけど、寂しそうな暗い音色も出せる。
そしてクリスタルな音色も出す。

明るく楽しげなところは彼の真骨頂。
まるで子どもが笑顔で色んな絵の具を混ぜて実験してるみたいな即興性。



ピアニストさんたちは皆、「楽しい」や「無邪気」を高い演技力で表現しますが、ブルースさんの演奏は演技ではなく自分自身なんですよ。

次にどんな演奏をするのか、予想がつかない、そういう魅力たっぷりの演奏をするのです。

そしてかなりのヴィルトオーソな指裁き。
トリルや真珠タッチは、相当均整とれています。


それなのに、名人芸を誇張することなく、音楽はとても無邪気で、楽しげで、純粋。
リズム感も半端ない。体幹ヤバいなと。

他の超絶技巧ピアニストさんて、わりと「俺すごいだろどりゃぁぁ!」って演奏する人多い…
ブルースさんには、良い意味でそれがない。

とにかく私のことを惹きつける、次もまた絶対に聞きたいと思う演奏をするピアニストさんです。

正直、3次は通ってくれるかな…と思ってました。
だって超絶魅力的な演奏をするし。

ショパンコンクール結果について

最終審査のコンチェルトは、確か日本時間の早朝4時を回っていました。

翌日仕事なので、普段は潔癖でベッドに絶対物を持ち込まない私が、消毒したイヤホンとスマホと持ち込んで、リアルタイムでの本選配信を待ちました。

もう、、身内か?!
という緊張で迎えた本選。

緊張の顔

緊張しすぎて、冷静な聞き方ができませんでしたが、彼の渾身の演奏で胸が詰まって泣きそうになりました。

ショパコン ファイナルでのコンチェルト1番演奏

このようなハイレベルのコンクールの審査基準って、難しいんです。
他のピアニストさんだって、本当に精鋭ばかり、各々の良さを存分に発揮していますし、最終的には好みや審査基準に左右されるから。

ブルースさんのショパンは、「ショパンらしいか?」と問われれば、たぶんNO。

彼の個性が、どこまで審査に影響するか分からず、心臓バクバクでやってられなかったので、演奏を聴いた後は睡眠薬を飲んで強制的に寝ましたw

翌日、彼が優勝だと聞いた時は、心の底からめちゃくちゃ嬉しかったです。
長年の恋が成就したような…いや恋だったのか?

もし優勝してなくても、彼の演奏のファンであることは変わらなかったと思います。
でも、自分が心の底から素敵だと思うものを、多くの方と共感できるってやっぱり嬉しいですよね。

ちなみに、入賞者コンサートで連日彼はコンチェルトを演奏していましたが、毎回少しずつ演奏変えてました。
なのに、この演奏はナイってのがないんですよ。

どんな姿をしていても、面白くて惹きつけてくる。
本質的に、自然体で音楽に没頭してるから?


後のショパコンインタビューで、彼はショパンに対して従来のイメージを覆す、自分らしいhappy chopinで勝負したかったと考えていたようです。

これが大勢に認められるって、すごいこと。
クラシックピアノ演奏って、以前は再現芸術だという考えが一般的だったから。

これについては語ると長いので、またの機会に…

ショパコンの審査員には、私の学生時代の恩師、海老彰子先生もいらっしゃるのですが、ブルースさんのことについてあれもこれも聞きたい気持ちです。(口外禁止かな?)


ちなみに、ブルースさんの演奏には非常に即興性を感じていて、エリーゼのためにのジャズアレンジ版も演奏していたから、てっきり即興もできる人なのかな?と思ってましたが、違うみたいです。

絶対音感もないそうです。

むじか

それを聞いて、筆者は非常に勇気づけられました…

世界中探し回って、ようやく理想の人を見つけたような気持ち。
私にとって、ブルースさんの演奏はそんな存在。

そこから彼の過去の演奏も聴きまくり、チケットも探したんですが、遠方か、完売かでなかなかとれず…

今回、奇跡的にキャンセル席が取れて、ようやく念願のリサイタルに行くことができました!!

コンサートのプログラムと感想

行ってきたのはミューザ川崎

ちょっと遠いため、初訪問でした!

ラモー:クラヴサンのための小品

クラヴサン曲集、新クラヴサン組曲集より
優しい嘆き
未開人
一つ目の巨人
雌鶏
2つのメヌエット
ガヴォットと6つの変奏

まず凄かったのは、クラヴサンで演奏してる??と思うような音色とタッチ。

クラヴサンて、ピアノとは違う楽器なんですよ。
ピアノは弦をハンマーで叩く打弦楽器
クラヴサンは弦を爪でひっかく撥弦楽器

クラヴサン(チェンバロ)イメージ


簡単に言うと、クラヴサンはピアノよりも音が消えるのが早い。

普通にピアノの打鍵をしただけだと、クラヴサンのような音の減衰感て表現できないんですが、彼の演奏では、ちゃんとクラヴサンで演奏しているかのような減衰感が表現されている。

それでいて、音は相変わらず均整がとれているし、大げさでない表情豊かな演奏。
てか装飾音がめちゃくちゃ美しい…
あとやっぱり音色が本当に優しくて温かい。

彼のショパンも大好きだけど、バロック奏者でもいいのでは?と思うほどの演奏幅にまた感動。

むじか

許されるなら彼に弟子入りして、私もあのタッチ習得したい…

ショパン:「ドン・ジョヴァンニ」”お手をどうぞ”の主題による変奏曲 Op.2

モーツァルトのオペラを題材とした変奏曲です。

この曲ではピアノらしいタッチに変化しました。
これはショパンコンクールでも演奏してました。

元がピアノとオーケストラのための曲として作られていて、かなりマイナーな曲。
これをコンクールで選択してる時点で、彼のヤバさ(超絶褒めてる)が窺えるわけです。

オケ曲をピアノ1台に凝縮してるわけだから、そりゃ難易度もとんでもなく高くなる。
それを、技術的にはさらっと、めっちゃ楽しそうにどんどん表情変えて即興みたいに演奏してしまう。

彼の魅力が全て紹介できるような、素晴らしく彼にふさわしい1曲です。
彼らしい、圧巻の演奏でした。
生で聞けて感激です!

ドンジョヴァンニの主題による変奏曲 ショパコンでの演奏

ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 「葬送」 Op.35

こちらもショパコンでも演奏してました。
1楽章は、執拗感が強く、私は実はそこまで好みでない曲だったんですが…

ブルースさんの演奏、和声感変化が素晴らしい…なんて思って聞いてたら、一瞬で終わりました。
1楽章、こんな短かったっけ???と。
繰返しを省いたこともあるでしょうけど、それにしても幸福な時間は一瞬で過ぎ去るのだと実感しましたね。

私は特に、ブルースさんの2.3楽章がすごく好き。
2楽章は、彼のリズム感と躍動感が存分に発揮されてました。
3楽章の葬送行進曲は、けっこう多くの方は「悲痛さ」を表現するんですけど、ブルースさんの演奏は「無の暗さ」なんですよね。

本当に大事な人が亡くなった時って悲しみを通り越して無になることも。
25歳で、その境地に至るのがすごすぎる…

そして今回、4楽章もコンクール時よりさらに洗練されてました!
どうしてそんなに上手いんですか…

ソナタ第2番 ショパコンでの演奏 

ショパン:3つの新練習曲

これは私も好きな曲で、楽しみにしていました!
一応ショパンエチュードなんで、3曲ともそれなりに難しいんですが、さらっと前座的な演奏をしてました。
彼の中では、ちょっと休憩、みたいな感じだったのかな?
まあこんなこともあります。

リスト:ドン・ジョヴァンニの回想 S.418

こちらもショパン同様、モーツァルトのオペラを題材にした曲です。

ブルースさんは、ドン・ジョヴァンニがお好きなんですね♪

これまでのリスト曲への私のイメージは、ズドーン、ドシーン、どやっ!って感じ。
よく言えば色気多め。
悪く言うと煩悩多めなイメージだったんです。
(実際リストは女性関係盛んで、晩年出家した)

そういうイメージで聞き入ると、ブルースさんの演奏は、リストの超絶技巧を生き写しにしたような指裁きと、出だしの重厚さ、壮大さはありつつ、潔い感じ。

リストなら思わせぶりで色んな女性を口説きまくるようなところを、ブルースさんならイタズラっぽくも実直に愛を伝えるみたいな感じ。

またしても新しいイメージに出会ったという感じでした。

ちなみに私の座席は、3階席のピアノの真後ろ。
ずっとブルースさんの、小さく見える後頭部を見下ろしてました。
響きが届きにくい場所なので、別の場所だとまた違った印象になったかもしれません。


今度はもっと良い席で聞きたい~!!

ちなみに、今回のプログラムは、ドンジョヴァンニを深く知っている人には、意図の感じる並びだったようです。

さて、ここからアンコールです。

バッハ :フランス組曲 第5番 BWV 816 より サラバンド

チェンバロのタッチ復活!
ブルースさんのバロックの演奏は、聞いていると欧州の宮廷にいるような気分になるからすごい。
一時期だけ向こうに行きましたが、空気が乾燥してて音が本当に響きます。
その響きを思い出すような感じ。

ショパン :3つのエコセーズ 第1番 Op.72-3

ピアノのタッチ復活!
ブルースさんにぴったりの明るく軽やかな曲です。
やわらかくも楽しげでした。

ショパン :エチュード 第5番 「黒鍵」 Op.10-5

ショパンコンクールの予備予選で演奏した曲です。(後で見た)
こんなに軽やかにbrillanteな音色でひけるのうらやましいです…

予備予選でのエチュードop.10-5(音源のみ)

ショパン:ワルツ第19番 イ短調(遺作)

この曲、実は私が次のミニ演奏会で演奏しようかと候補にしてた曲です。
めちゃくちゃ嬉しい!!
そして彼の演奏を聴いて、この曲をプログラムに入れることを確定させましたw

音数少なく、とてもシンプルな曲。
それを、どうやって魅せる演奏をするのかとても勉強になりました!
同じようには演奏できないだろうけど…私も少しでも美しい演奏ができるようにがんばろう。

リスト :ラ・カンパネラ S.141

リストだけど、ブルースさんにぴったりな軽やかで華やかな曲。
5曲も演奏すること、有名どころだったこともあり、歓声湧いてました。
終わった後は会場スタンディングオベーション。
圧巻の幕切れでした!

アンコール5曲!?

ピアニストのリサイタルでのアンコールは多くて3曲以内が一般的。

それを5曲も、しかもエチュードやカンパネラを軽々入れてくるあたり…
体力、気力、精神力、演奏力ハンパない。
サービス精神も旺盛。

このリサイタルの後、幸福感がすごかったです。

今後の彼の演奏、活躍も心から応援してます。



この3日後、別場所でのリサイタルではアンコールはほぼ別曲のチョイスだったようです。
そちらも聴きたかった…
レパートリー本当に半端ないですね。

次回、近隣では10月にコンチェルトを弾くみたいです。
仕事の曜日なのでまだ分からないけど、可能な限り行けるようにしたいなぁ。

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