世の中には沢山の教本がありますが、遠方の大型楽器店に行かないとなかなか内容を目にできないと思います。
現役ピアノ講師の筆者が、実際に使っている教本の感想と、使用法を徹底解説します!
教本選びの参考になれば幸いです。
この記事の内容
・シニア1の特徴
・ピアノ講師の実際の使用法
・購入者の口コミ
・シニア1が向いている人
・レベルや何歳が適切?などFAQ
この記事の執筆者
『ピアノひけるよ!』シリーズについて
ピアノひけるよ!シリーズは、以下の出版があります。
ラインナップ詳細はこちら
【基本教本】
ジュニア1~3
シニア1~3
【併用曲集】
レパートリーA
レパートリーB
レパートリーC
ジュニア変奏曲集
シニア変奏曲集
【テクニック教本】
はじめのテクニック1
はじめのテクニック2
きほんのテクニック
【併用ワーク】
ワークブック1~3
シニアワークブック1~3
ワークブックもんだいしゅう1~3
楽典ワーク
今回はピアノひけるよ!シニア1について詳細解説します。
『ピアノひけるよ!シニア1』の特徴と内容
全体の特徴
・「知ってる曲でひける」がコンセプト
・有名クラシックや海外フォークソングが収録
・バイエル中程度レベル
・収録曲数26曲(音階・曲被り除く)
・3拍子の楽曲も多く学べる
・教本前半は主要三和音の伴奏のみ
・教本後半に借用和音が出現
学習内容
楽典は教本側で説明のあるもの、テクニックは筆者が選別して記載しています。
楽典
・音域はへ~3点ハ
・ハ長調、イ短調、ト長調、ホ短調の音階
・♯の説明
・6/8拍子
・16分音符
・付点8分音符
・2/2拍子
・三連符
・はずんだリズム
テクニック
・指くぐり
・手の移動
・指ひろげ
・指ちぢめ
・跳躍
・ワルツ伴奏
・アルベルティ・バス伴奏
・同音連打の指使い
・その他分散和音伴奏
・色々なアーティキュレーション
・色々な強弱
各楽曲の特徴と解説
収録されている曲の特徴、要されるテクニック等について解説します。
色付きは、特筆すべき学習内容です。
詳細は、曲名をタップしてください。
ハ長調の音階
・ハ長調の解説と音階
・音階は、左右とも1オクターブの上下行
・カデンツ、和音についての記載はなし
1.天国と地獄:オッフェンバック
・2/4拍子
・Allegretto
・ハ長調
・反復記号の1.2カッコあり
・左は簡易分散和音伴奏
・右手指くぐり
2.かわいいオーガスチン:ドイツ民謡
・3/4拍子
・Allegretto
・ハ長調
・反復記号の1.2カッコあり
・付点のリズム
・左手ワルツ伴奏
3.モルゲンレーテ:ドイツ民謡
・3/4拍子
・Allegretto
・ハ長調
・右手単旋律だが広がり多い
・左手ワルツ伴奏
4.気のいいアヒル:ボヘミア民謡
・♯の解説
・3/4拍子
・Allegretto
・ハ長調
・左ワルツ伴奏、一部変形あり
5.波をこえて:ローザス
・3/4拍子
・tempo di Valse
・ハ長調
・右手と左手でフレーズのズレあり
・左ワルツ伴奏
・タイ
イ短調の音階
・イ短調の解説と音階
・音階は1オクターブ上下行
・自然、和声、旋律的短音階あり
・各音階の説明、和音説明なし
・ハ長調との関係性の説明なし
6.スラブ行進曲:チャイコフスキー
・4/4拍子→Cの解説
・Moderato
・イ短調
・左手が一定のリズム伴奏
・右手単旋律
・左右分離が少し難しい曲
7.峠のわが家:アメリカ民謡
・3/4拍子
・Moderato
・ハ長調
・クレッシェンド
・ディクレッシェンド
・左手ワルツ伴奏→伴奏形変化
・Ⅵ和音、ドッペルドミナント出現
・反復記号の1.2カッコあり
8.大きな栗の木の下で:作曲者不明
・2/4拍子
・Moderato
・ハ長調
・legatoの記載
・アルベルティ・バス伴奏
ト長調の音階
・ト長調の解説と音階
・音階は1オクターブの上下行
・調号の適用範囲の説明
・ハ長調との関係説明なし
9.ト調のメロディ:橋本晃一編曲
・4/4拍子
・Allegretto
・ト長調
・アルベルティ・バス
有名な「ト長調のメヌエット」を、この本の編著者橋本さんがアレンジした楽曲です。
バッハ作曲となっていますが、近年ではペツォールト作曲が正しいとされています。
10.星かげさやかに:外国曲
・4/4拍子
・Moderato
・ト長調
・左手和音のみ伴奏
・左1拍目休符
ホ短調の音階
・ホ短調の解説と音階
・自然、和声、旋律的短音階あり
・音階は1オクターブ上下行
・各音階の説明、和音説明なし
・他の調との関係性の説明なし
11.荒城の月:滝廉太郎
・4/4拍子
・Andante
・ホ短調
・左手分散和音伴奏
12.まほうの鈴:モーツァルト
・4/4拍子
・Allegretto
・ト長調
・アウフタクト
・左スタッカートの分散和音伴奏
13.おもいでのアルバム:本多鉄磨
・6/8拍子
・Moderato
・ハ長調
・左分散和音伴奏
14.浜辺の歌:成田為三
・6/8拍子
・16分音符
・Andantino
・ハ長調
・アウフタクト
・左分散和音伴奏
15.四季より「秋」:ビバルディ
・4/4拍子
・Allegro
・ハ長調
・テヌート
・16分音符
・左右ほぼ同リズム
16.おめでとうクリスマス:イギリス民謡
・3/4拍子
・Allegretto
・ハ長調
・借用和音多用
17.ケンタッキーの我が家:フォスター
・4/4拍子
・Andante
・ト長調
・付点8分音符
・左右リズムのズレ
・左手分散和音
18.おおスザンナ(1):フォスター
・2/4拍子
・Allegretto
・ハ長調
・アクセント
・アウフタクト
・反復記号1.2カッコあり
おおスザンナ(2)
・2/2拍子
・Allegrettp
・ハ長調
・楽譜の記譜法の違い学習
おおスザンナ(1)と同じ曲ですが、拍子が変化し、記譜法が変わったことを解説しています。
19.草競馬:フォスター
・2/2拍子→¢の解説
・Allegretto
・ハ長調
・反復記号1.2カッコあり
・左手和音&分散和音伴奏
20.トトトの歌:作曲者不明
・4/4拍子
・Moderato
・ト長調
・3連符
・変形3連符
・左手分散和音伴奏
私が子供の時は「チャップスティック」という曲名で習った気がします。
21.わらの中の七面鳥:アメリカ民謡
・2/2拍子
・Moderato
・ハ長調
・アウフタクト
22.オクラホマ・ミキサー:アメリカ民謡
・2/2拍子
・Moderato
・ハ長調
・アウフタクト
・はずんだリズム
「わらの中の七面鳥」は8分音符で書かれており、こちらのオクラホマは付点8分音符+16分音符の弾んだリズムで記載されている同じメロディの曲となります。
リズムが変化したことが教本内でも解説されていますが、一部誤解を招く記載があるので注意。
23.のんびりカウボーイ:橋本晃一
・4/4拍子
・Andantino
・ハ長調
・左手が一定の「はずむリズム」伴奏
・meno mosso
24.ともだち賛歌:アメリカ民謡
・4/4拍子
・Allegretto
・ハ長調
・左手和音伴奏
・平行調からの借用和音あり
25.モーツァルトの子守歌:モーツァルト
・6/8拍子
・Moderato
・ハ長調
・左手分散和音伴奏
26.口笛ふいて:ドイツ民謡
・2/4拍子
・Allegro
・ハ長調
・左手和音→分散和音伴奏
長所と短所、使用法について解説
この教本の長所と短所、それをふまえた、筆者なりの使用法について解説します。
長所と短所まとめ
長所 | 短所 |
---|---|
〇様々なジャンルの曲に触れられる 〇基本和声の説明に最適 〇3拍子楽曲も多く勉強できる 〇色々な伴奏形が勉強できる | 〇耳馴染みのある曲が多い△一部誤解を招く記載あり △音域の進みが早い △テクニック面が弱い子には少々難しい | △調の和音について説明なし
長所1:耳なじみのある曲が多い
「知ってる曲で学べる」が人気の理由の1つ。
有名クラシックから童謡、日本の歌、フォークソングなど幅広いジャンルから選曲されているのも◎。
筆者は「知ってる曲じゃないとやる気が出ない」という生徒さんへ、この教本をよく使います
長所2:和音分析の基本指導に最適
1~5曲目まで、伴奏がハ長調の主要和音のみで構成されている。
7曲目で借用和音が登場し、後半に行くにつれて伴奏の豪華さも感じられる構成が素晴らしい。
様々な分散和音の伴奏形が出てくるので、その説明にも最適。
小学校中学年~大人初級の生徒さんへ、この教本をつかって基本和声を徹底指導しています
長所3:3拍子曲の収録が多い
初級教本では、4拍子の曲が多くなりがち。
この教本は3拍子の楽曲も多いので、3拍子に慣れさせるのに向いている。
3拍子の拍子感、強・弱・弱もここで説明&体感指導します
短所1:読譜力の向上には不向き
知ってる曲ゆえに、楽譜をしっかり読まなくても弾けてしまう人がいる。
やる気と読譜力を天秤にかけて、やる気を引き出すべき、という生徒さんにこの教本を使用してます
短所2:各項目の説明がかなり少ない
教本内の文章説明がかなり少ない。
教本の解説をさらっと読んで曲を弾いただけでは、内容が薄くなりがち。
使う人の知識量によって、充実度がかなり変わる教本と感じる。
筆者はこの教本で調性を教える時、必ず補足説明をします
短所3:テクニック面が弱い人には難しい
知っている曲ばかりというとっつきやすさに反して、弾くには意外に難しい。
手の移動、跳躍や伴奏形が変化しても混乱せず弾ける人におススメ。
様々な伴奏形が出てくるので、筆者はそれぞれの「基本の弾き方」を教えています
「一部誤解を招く記載」について
教本内で、以下の記載があります。
これは厳密には異なるリズムです。
教本をよく読むと全く同じではないという意図が分かりますが、説明が不足しているため、誤解する人がいるかもしれません。
ポップス等では、よく見かける表記なのですが、注意が必要です。
ネット上の口コミと筆者の見解
良い口コミ
有名曲が沢山でてきて楽しいみたいで、娘は夢中で一日一曲仕上げてしまう程、集中して弾いています。
やはり知っている曲はモチベーションを高めやすいですね♪
知ってる曲ばかりなので歌いながら楽しそうに弾いてくれます。
みんなこの曲集は暗譜が早い!
既に知っている曲なので、弾く&覚えるのは早まりますね。
楽譜がちゃんと読めているか?は確認したほうがよいですね。
悪い口コミ
急に難しくなったようで、弾きたいけど弾けなくて断念しています。練習にも向かわなくなってしまいました。
手の移動や跳躍がまだ不十分な方には難しい教本です。
シニア1が向いている人、向いてない人
以上の教本の特徴から、筆者の結論を述べます。
シニア1が向いている人
・知ってる曲でモチベーションが上がる人
・身体がスムーズに動く人
・高学年や大人への和声解説・指導
シニア1が向かない人
・手の移動、跳躍がまだ不慣れな人
・左右別の手の動きがまだ不慣れな人
・読譜力を強化すべき人
レベルや何歳が適切?など教本FAQ
親御さんたちのよくある疑問などに回答します。
11歳でこの教本を弾くのは進みが遅いですか?
教本と年齢・年数は関係ないです。
教本=実力でもありません。
先生は何を学ばせたいかで使用教本を考えています。
ピアノの実力って何?という方は以下をどうぞ
シニア1は、バイエルだと何番くらいですか?
おおよそ60番~と同程度です。
ただし双方の特徴は異なります。
シニア1レビューまとめ
- 知ってる曲でやる気アップに最適
- バイエル中程度、身体が動きやすい人へおススメ
- 和声や伴奏形が体系的に学べる
- 大人にもおススメ
- 読譜力の強化には向いていない