この記事ではこんな疑問、お悩みを解決します。
・ピアノの曲の難度力とは?
・曲の難度力向上ロードマップ
この記事の執筆者
ピアノの曲の難度力とは?
色々な曲を短期間で演奏できる力のことです。
他の力に加え、曲全体や練習計画を俯瞰し、まとめる力がなければ曲を演奏しきることができません。
曲の難度力を高めるには、以下を意識しましょう。
・練習のやり方
・練習計画
・時間管理
・モチベーション管理
・課題探求、改善
ここでは半年以内に自力で60%の完成度にできる曲の難易度を、現在の難度力とします。
※60%の完成度というのは、曲の途中まで弾けるということではなく、曲を最後まで弾ききり、表現等も含めた完成度のことを指します。
以下の場合は曲の難度力ではなく、身体技術力を見直すのが近道です。
・速い曲だと弾けない
・難しい曲だと技術的に不可能
曲の難度力向上へのステップ
自身の曲の難度力を知るには?
自身の曲の難度力が分からない方は、以下記事で、曲の難度力を診断しましょう。
曲の難度力向上のために大事なこと
難度力アップにおススメのやり方
・色々な曲に多く挑戦する
・曲を練習する際、目的意識をもつ
・2曲以上並行して練習する場合は、少なくとも1曲は自身に合う難易度を選ぶ
・曲を通じて、自身の強み、弱み、効率の良い練習法を見つけるようにする
難度力アップにおススメのやり方
・色々な曲に多く挑戦する
・曲を練習する際、目的意識をもつ
・2曲以上並行して練習する場合は、少なくとも1曲は自身に合う難易度を選ぶ
・曲を通じて、自身の強み、弱み、効率の良い練習法を見つけるようにする
曲を練習する際、目的意識を持つことはかなり重要です。
たとえば、以下のような目的をもって曲に取組むと良いです。
A.半年以内に、完成度60%程度で2曲を練習しきるという目的(期限と曲数が目的)
B.90%以上の完成度を目指して大好きな1曲を練習する(完成度が目的)
C.3カ月以内に、できるだけ沢山の曲の譜読みを終わらせる(期限が目的)
このような目的をもって練習をする習慣がつくと、自身がどのくらいの難易度の曲を、どれくらいの期間で、何曲くらい弾きこなせるかが分かるようになってきます。
ただし、テクニック習得を目的とした曲の練習は、やり方に注意が必要です。知りたい方は補足をご覧ください。
(補足)テクニック習得を目的とした曲の練習の注意点
例えば、オクターブが苦手な方が、オクターブの多用された曲を練習するとします。
苦手な理由が、弾き方が悪い・手が開かない等の場合、オクターブが多用された曲を練習しても、それが得意になる可能性は低く、むしろ故障リスクが高まります。
その場合は、まず根本原因を改善するのをおススメします。
既に根本改善をしていて、無理のない身体の使い方ができている状態なら、実践練習として曲の練習をするのは良いです。
その場合はいきなり高度な曲にせず、少しずつ難易度を高めていくのがおすすめ。
曲の難度力向上のステップ
曲の難易度にかかわらず、基本的にはこのような流れでの計画&練習がおすすめ。
1:目標を定める
目標を立てるポイント
ピアノ練習で目標を立てる時は
いつ(期限)までに、どんな状態(完成度)にするか
をできるだけ具体的にし目標を立てるとよいです。
そして、逆算して練習計画を立てましょう。
ちなみにプロでも、100%完璧な演奏というのはありません。
自分にできるベストやベターを高める意識でいきましょう。
目標例:エリーゼのためにを半年以内に60%の完成度で演奏する
今回は曲の難度力アップが目的ということで、期限は半年後、状態は60%の完成度、という目標を立てたと仮定して解説します。
今回は「エリーゼのために」を例にします。
その他の練習方法は以下もご参照ください。
ピアノ曲 効率的な練習方法(作成中)
2:全体を把握、練習計画を立てる
1.曲を知る
曲を知る方法は以下
・初見で弾いてみる
・音源を聞く
今回は半年以内に60%の完成度で演奏するが目的なので、音源を聞くと早いです。
もし、読譜力アップが目的であれば、まずは音源に頼らず練習したほうがよいです。
2.アナリーゼ
アナリーゼとは楽曲分析のこと。
ですがここでは難しく考えなくてよいです。
曲の形、全体の流れを把握しましょう。
この曲はA→B→A→C→Aの流れになっています。
BまたはCが特に難しい(時間がかかりそう)と感じる人が多いかと思います。
難しいところから練習を始めるのがおススメ。
3.おおまかに練習計画を立てる
今回の目標「半年以内に60%の完成度で演奏」を達成するために逆算して練習計画を立てます。
目標決め~細部練習:約2、3カ月
区分練習:約1、2ヶ月
全体練習と仕上げ:約1、2ヶ月
練習計画の立て方 具体例
今1月。仕上げに1ヶ月あった方がいいから、遅くとも5月には1曲通して弾けないとかな。
区分練習は2ヶ月くらいあった方がいいかも?そしたら3月くらいから区分練習に入ろう。
じゃあ譜読みと細部練習で、3ヶ月ある。まずは難しそうなBから譜読みしよう。
全体の練習期間が見えたら、さらに練習内容を具体化し、1ヶ月の練習目標を決めるとよいです。
1ヶ月の練習目標決め方 具体例
最初の1ヶ月で、BとCの譜読みは手をつけたいな。
混乱しなければAも少し見てみよう。
次の1ヶ月で、B・Cの両手演奏はできるようにしたいな。
Aの譜読みも終わるように
3ヶ月めには、ABCそれぞれ自信をもって弾けるようにだね。
その後の具体的な計画はまた状況を見て考えよう。
いつも練習期間が長くなりがちな人は是非やってみて!
3:細部練習
細部練習ではエリーゼのB部分を例に解説します。
練習の仕方は人によって合う方法が様々なので、ここでは誰にでもおススメな方法のみ記載します。
細部練習の手順は以下。
1.指使いを探る&決める
2.弾けないところは細かく分けて練習
3.拍にのり自信をもって弾けるよう練習
1.指使いを探る&決める
画像の赤文字は、筆者の指使いです。
ここは5443214321 でもいいし、3221432132とかでもいいです。
合う指使いは、人によって異なります。
スムーズに美しく弾ける指使いならなんでもOK
ですが、吟味して決めた指使いは、以後練習の際には守るようにします。
やはり弾きにくいと感じたら、早めに指使いを改善しましょう。
2.弾けないところは細かく分けて練習
弾けないところは1小節だけ、1フレーズだけなど細分化して練習します。
赤部分、片手ずつならどちらも弾けるのに両手だと動きを迷います
では両手でゆっくり赤部分だけ練習しましょ!
今度は次の装飾音のタイミングがつかめません。
右手だけ弾いても難しいです。
では右手だけで、青部分のタイミングをとる練習をしましょ。
練習の仕方 判断ポイント
・片手で弾けない→片手練習を推奨
・片手でなんとか弾ける→片手練習を継続
・片手でスムーズだが、両手だと弾けない→両手でゆっくり練習を推奨
3.拍にのって自信をもって弾けるよう練習
拍にのって良いリズムと音で弾けるならば、両手でも片手でもOKです。
弾けないところを減らしていき、次の区分練習に進んでいきます。
拍にのって良いリズムで弾ける とは?
曲を演奏する時、いつも身体の中で拍を感じているのが理想です。
ほとんどの楽曲は、本来はしかるべき所でテンポの「揺れ」が生じます。
しかしその「揺れ」は、適当な揺れではなく、拍を拡大したり縮小したりして生じる揺れであるのが良いです。
ただこれは、多くの初~中級者には難しいかもしれません。
難しいと感じる場合は、まずはメトロノーム等を使い、一定のテンポにのっとって弾けるようにするところから始めるのがよいでしょう。
B部分がざっくり弾けてきたら、CやA部分の細部練習にも取りかかります。ここまでで約2~3カ月。
4:区分練習
区分練習①
先ほど分けたA,B,Cそれぞれ区分だけなら両手で自信をもって弾ける状態にしていきます。
確認ポイントは以下。
・拍にのって両手で弾ける
・区分の頭、または途中からでも弾ける
・楽譜のどこを弾いているか把握できる
・いつもつっかかる箇所がない
・可能なら大まかな強弱、抑揚も練習する
できないことがあれば、細部練習に戻します。
よくある事例もご紹介します。
例:長くなると、どこを弾いているのか分からなくなる
赤線までならスムーズに弾けるのに、A全体を弾くと繰り返し回数が分からなくなる
曲全体の流れを把握していないようです。
・音源を何度も聞く
・楽譜を確認する
・今どこを弾いているか弾きながら把握できるテンポに落として練習
などを行います。
区分練習②
区分練習①ができたら、区分同士をつないでいく練習をします。
エリーゼのためにの事例では
AとBつなぎ | BからAに戻るところ |
AとCつなぎ | CからAに戻るところ |
これができたら、さらにつなぐ。
この段階で1曲通せる人は全体練習に移ってもOK。
ABAつなぎ | ACAつなぎ |
ABACなど | BACAなど |
確認ポイントは、区分練習①と同じです。
・拍にのって両手で弾ける
・区分の頭、または途中からでも弾ける
・楽譜のどこを弾いているか把握できる
・いつもつっかかる箇所がない
・大まかな強弱、抑揚も練習する
よくある事例もご紹介します。
例:1区分では弾けたのに、つなぐと弾けない所ができた
Aだけ、Bだけは弾けるのにつないだらBが弾けなくなりました
原因1:テンポ不一致かもです!
AとBを、微妙に異なるテンポで区分練習していて、つないだらBが追い付けなくなった、という事例です。
メトロノームを使わない人にありがち。
この場合、対処法は3つ
1.練習工程を戻し、BをAと同じテンポで弾けるように練習
2.上記ができなければ、AをBの遅いテンポにそろえる
3. Aは速く、Bは少しゆっくりで良しとする(完全趣味人向け)
原因2:集中力、スタミナ不足
単に長時間演奏に慣れていないだけという場合もあります。
この場合、対処法は2つ
1.一定期間通し練習をする
2.正確に弾けるテンポに落として区分練習②をする
なお、上記2つで改善が見られない場合は原因を他に考えます。
ここまででさらに1~2ヶ月経過
5:全体練習
これまでのステップでしっかり課題をクリアしていれば、ここで大きく困ることは少ないでしょう。
ここでやることは以下です。
・全体のバランスを考慮して、どう弾きたいか感じる
・通し演奏の練習
・崩れてくる所の部分練習
Aは何度も出てくるから、途中のAはあまり歌わずサラっと弾こうかな?
よくある事例も紹介
例:だんだんと演奏が崩れてきた
弾き方が変わった可能性があります!
・最終的な抑揚の影響で弾き方が変わった
・慣れて身体の動きだけに頼っているうちに弾き方が曖昧になった
このような原因が考えられます。
この場合は以下の対処をします。
1.弾けなくなった箇所を取り出し、楽譜を見直す、ゆっくり丁寧に弾いて動作確認をする。
2. 1で取り出した箇所の2~4小節前からつなぐ練習
3.テンポを少しずつ戻して練習
1.弾けなくなった箇所を取り出し、楽譜を見直す、ゆっくり丁寧に弾いて動作確認する。
2. 1で取り出した箇所の2~4小節前からつなぐ練習
3.テンポを少しずつ戻して練習
おつかれさまでした!
半年経過、または60%完成など目的を達成した時点で、いったん区切りとしてOKです。
もし本番で演奏したい場合は、本番前の練習方法をご参照ください。
6:振返りと次の目標
この項目は、あくまで実力を高めたい方向けです。
気楽に楽しみたい方はスルーしてください。
「エリーゼのために」を、半年以内に60%の完成度で演奏する目標を立て実行し、いかがでしたか?
Aさんの振り返り
半年では弾けるようになりませんでした。
「弾けなかった」とは、具体的にどういうことですか?
速いフレーズはほとんど弾けるようにならずでした。
では身体技術力を強化すると良いかもですね!
Bさんの振り返り
半年間で弾けるようになりましたが、音を並べるので精一杯で、表現は全然です。
表現技術、読譜力、練習のやり方など、どこを見直せば、その問題を解決できそうですか?
読譜力と、練習のやり方かもしれません。
では次の目標は練習のやり方を見つめながら、読譜力強化の課題もやるとよいかもです!
Cさんの振り返り
5ヶ月で、自分なりにはよい感じで演奏できました!
すばらしい!では次の目標はどうしましょう?
次は明るく快活な少し難しい曲を半年で弾く目標にします!
この振返りを、次の曲の演奏や、目標にいかしましょう!
1.目標を決める
2.全体の流れを把握し練習計画を立てる
3.細部練習で演奏の土台をつくる
4.区分練習でまとまり構築
5.全体練習で仕上げ
6.振返り&次の目標
この記事の参考文献
おまけ♪ピアノを長く続ける秘訣
今回記載した方法は、あくまで曲の難度力を高めるための効率的な練習方法の一例です。
目的をもって練習することが大事としましたが、常に目標を持たなければならないという考えは、時に余計な重圧をかけてしまいかねません。
楽しくピアノを奏でるのが目的なら、今回のようなやり方にせず、心のままに曲やピアノを楽しむのもまた正解なのです。
ですが、長年ピアノを続けている方は、好きな曲を、それなりに短期間で演奏できる方が多いのもまた事実。
最初は自由にやるのが楽しくても、好きな曲を弾くのに、いつも長い時間がかかるのであれば飽きやすいものです。
「弾く楽しさ」を持ち続けるには、やはり技術を習得するために努力する期間も必要かもしれません。
ほとんどの人はピアノで「好きな曲を何でも、自由に弾ける」ようになるには、長い年月がかかります。
その長い年月を、ピアノとうまく付き合っていくためには、今回記載したような【加速期】と、のんびり音楽を楽しむ【安息期】のバランスがうまくとることが大事と考えます。
やる気が自然とわく時は目標を立てて【加速期】を楽しみ、気分が乗らない時や忙しい時は【安息期】に入るのをおススメします!