ピアノの先生に「もっと脱力して弾きなさい!」と言われるのですがうまくできません。
どうしたらいいですか?
「脱力の方法」ですね。
そのお悩みに答えます!
この記事の執筆者
ピアノ演奏の脱力とは?
ピアノで「脱力」して弾くとは、どんな状態かお話できますか?
身体の力をできるだけ抜いて、ピアノを弾くことですよね?
自分ではやってるつもりですが…
ピアノ脱力というと多くの方は
全身の力を抜こうとしてしまうのですが…
前提として、人間は基本的にどこかしらに力が入っています。
本当に全身の力が抜けたら、倒れこんでしまいますね?
立っている時は足に、座っている時は腰や腹筋に、少なからず力は入っています。
ということは、ピアノを弾く時は座っているので、身体の「脱力」なんて無理じゃないですか!?
はい、ピアノを弾く時に全身の「脱力」はできません。
しかし不要なところの力だけ抜くことはできます!
・不要な部分の力をぬく
・必要な「時」「部分」「量」だけ力を使う
!よくある脱力の失敗!
・力を使う部分が不明
・力を抜く部分が不明
・力を使いすぎる
・不要な時に力を使ってしまう
「脱力奏法」という言葉のせいで、誤認されることが多いかもですね。
「省エネ奏法」という言葉の方が、的確かもです!
脱力の練習方法
脱力しようと思ってもできない理由が分かりました。
どうしたらピアノで、脱力できるようになりますか?
しっかり脱力を身につけたい場合は、まず
自分の身体の状態を意識する
ことから始めるのがおススメ。
日頃から「脱力感覚」を意識する練習
そもそも、多くの方は
自分の身体に力が入っていることに
気づいてすらいません。
緊張すると
肩がこわばる、
歯を噛みしめている、
物を持つと小指が立つ、
…ありませんか?
た、確かに・・・無意識です!
その無意識が厄介!
力が入っている部分に気づいたら
意識的に力をぬくよう、日頃から心がけてみてください。
腕の各部分の「脱力感覚」を知る練習
次にもう1つ、
脱力の練習方法をお伝えします。
指先・手首・前腕・上腕
それぞれの脱力を
する練習です
①腕から指先まで全て力を入れて、ピンと伸ばす
②指のつけ根から先だけ力を抜く
(手首まで一緒に抜けてしまう人多!)
③指先・手首の力をぬく
④ひじから先(前腕)の力をぬき、
上腕だけ力を保ってみる
参考:藤本雅美著 ピアノのためのフィンガートレーニング
川染雅嗣著 明解ピアノ上達法 など
(筆者なりに加筆・アレンジしています)
鏡を見てやると良いです。
指先と手首、ひじと手首が連動する人が多いです。
いつも意識すればだんだん分かるようになります。
脱力感覚が分かったら、次に
ピアノを弾く時に必要な力の加減や方法を学ぶとよいです。
- 日頃から自分の「身体の状態」を意識
- 力が入っている部分に気づいたら、意識して力をぬく練習
- 実際に腕の脱力の練習をしてみよう
ピアノの「脱力」具体例
◆1本の指で鍵盤をひく時の例
例として基本的な打鍵の
身体の使い方や状態についてお話します。
ただ2指でドーとひきたい時。
横から見て手がこのようになっているのがベター。
もちろん個人差はありますが。
鍵盤をひく瞬間は
第1関節と、わずかに第3関節を動かす力をつかいます。
※得たい音色によって異なる
音をのばしている間は
第1、2、3関節それぞれが
元に戻ろうとする鍵盤に負けないよう支えられていれば十分。
鍵盤の重さが約50gなので
音をのばしている間に必要な指の力は
指1本で、※100円玉10枚を支えられる程度
の量で十分ということですか?
※ピアノによって鍵盤の重さは多少異なります。
なお指の方が面が狭く、圧力が大きくなるので100円玉より少ない力で支えられます。
そうです!ちなみに
ピアノ脱力を早く習得するには、
音が出た後の身体の状態に着目するのがコツです!
【鍵盤をひく時】
使いたい指の第3関節、少しだけ第1関節
【音をのばしている時】
100円玉10枚を1本の指で支えるくらいの量
◆脱力できている目安例
上例の場合、
音をのばしている間、
腕や手首の力は必要だと思いますか?
今までのお話からだと不要そうですね?
そのとおり!今回の例では、
音をのばしている間は
下図のような状態がよいです。
よくない例として、
音をのばしている間
下のような手の状態になっている人がいます。
さっきと比べると手首が高い!
実際には、
見た目で分かりにくい程度に
手首に不要な力が入っている人が多いです。
理由は主に以下。
手首に不要な力が入る主な理由
- 手の形を整えようとするから
- 指が弱く、指だけで打鍵できないから
- 腕が落ちる感じがし、無意識に手首で腕を支えるから
- 以上の1つ、あるいは複数により手首持ち上げのクセがついているから
音をのばしている間も、
不要な手首の力をつかっているということですよね?
この場合はピアノで「脱力」できていない、
ということになりますか?
はい、ピアノで曲を弾く時は
同時に色々なことを
意識しなければならないため
無意識に自身の「クセ」が
発動してしまい
気づきにくいんです。
悪いクセをしっかり直して
確実に上達したければ、
1つ1つの動作や、部分に着目しやすい
【フィンガートレーニング】がおススメです。
今回は基本打鍵の例をお話しましたが
「どう演奏したいか」で身体の使い方は様々に変わります。
それはまたの機会に。
・手首が上がりすぎ、下がりすぎていないか?
・手首が上がりすぎ、下がりすぎていないか?
・腕や肩など、不要なところがこわばっていないか?
・腕や肩等、不要な部分がこわばっていないか?
脱力できていないと何がマズい?
脱力不足が一因となって起こる
さまざまな問題 例
- 身体が痛くなる(最悪の場合、故障)
- 指などを強くできない
- 速い曲、難曲などが弾きにくい
- 音が汚い、響かない
- 音色、強弱の幅が出せない
- 美しいレガートができない
- 表現力に乏しくなる
etc…
一言でいうと、
上達の妨げになります!
脱力FAQ
Q1:体が痛くならなければ、脱力できている?
ピアノを弾いていて身体が痛くならない人は、
脱力できている、と思っていいですか?
話だけでは分かりません。
本当に脱力できているか否かは、「音色」に表れます。
脱力できない=痛み と考えるのは早合点。
もともとの筋肉や関節の強さが
人によって異なり、
身体が強めの方は、脱力できてなくても痛みが出にくいです。
大きな音を出すと耳をつんざく割れた音になる人、
か細く響かない音色になる人、
は、脱力できていない可能性が高いです。
Q2:ピアノを弾いてるだけでは上達できないの?
脱力ができないと、ピアノは上達しないのですか?
ノーです。
ピアノを弾くだけで伸びる要素、
脱力できないと伸びない要素、
それぞれ存在します。
これはまた、別の機会にお話ししましょう。
Q3:脱力できるようになれば、必ず上達する?
脱力がしっかりできるようになったら、
私は一流のピアニストになれますか?
残念ながらノーです。
脱力はピアノ上達への重要な要素ですが
真に上達するには、
その他の総合力も必要です。
ホームランが沢山打てても、
体力や守備力が全然ないと、
プロ野球選手としてやっていけませんよね?
同じです。
その他の総合力について知りたい方は以下↓
ただ、脱力できるようになると
演奏や身体に、明らかに良い影響が出始める
ことは、確かと言えますね。
・脱力できているか否かは、音色に表れる
・脱力できていなくても、ピアノを弾いているだけで伸びる要素もある
・脱力できていない人は、脱力できるともっと上手になれる!
まとめ
- 全身ではなく、不要な部分の力を抜く
- まずは自身の「脱力状態」に気づけるように練習
- いつ、どこに、どのくらい力を使うのか知識&実践を学ぶ
この記事の参考図書
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